春の日のこと(1)

(このお話はフィクションです。実在の団体及び個人とは一切関係ありません。)

突然だが、僕の所属している部署ははっきり言って激務の嵐だ。僕はここしばらく(大体1年くらいになるだろうか)の間、22時より前に家に帰った記憶が数えるほどしかない。ちなみに朝は8時には自席にいる。土曜日は月に一日くらいなら休める。当然、自分の時間なんてのは殆ど無い。
そんなところだから、心を病んで会社に来なくなる人も多い。僕の覚えている限り、ここ2年くらいは常に誰か1人以上が長期療養中になっている。僕の親しくしていた先輩もそうだった。だから、先輩が復帰すると聞いて僕らは当然のように『お帰りなさい会』を企画した。
4月のとある金曜日、僕らは仕事を定時に切り上げて街に繰り出した。お目当ての店は、肌を大胆に露出した衣装の女性店員が給仕をしてくれるという話題の居酒屋だ。僕は正直に言うとその店があまり好きではないが、先輩が好きな店なのだから当然のように笑顔で「良いですね!行きましょう!」と答えた。社蓄の鏡と呼んで欲しい。しかし、病み上がりの先輩はその日も体調を崩してしまい、結局僕らは主役不在のまま店に向かうことになった。
それでも飲み会は楽しかった。あっという間の2時間を過ごし、そのまま僕を含めた数人は二次会の店を探すことにした。ゴミみたいな地方都市だけど、飲み屋だけは沢山有る。店に困ることはないだろうと思っていた所、別の先輩が「行きたい店がある」と言い出した。断る要素は特にない。僕と、もう一人の先輩でお供することにした。


歩くこと十分程度。着いたのは、おっパブだった。


余談ではあるが僕は童貞である。生まれてこの方、彼女がいたこともない。純粋培養温室育ちのチェリーボーイだ。いや、一点だけ訂正する。もう流石にボーイと言い張っていい年齢じゃないかも知れない。
そんな僕であるから、当然ながらおっパブなんてのは未知の世界であり何も判らない。よく判らないままに混んでいるらしい店の待合室(と言う名の屋外席)でビールを飲みながら、順番を待った。待つこと30分程度。ようやく店内に通された。暗い。そしてうるさい。
僕らは3人で来店したが、店はその日も大繁盛していたらしくそれぞれ個別の席に通された。店側の配慮なのかも知れない。確かに、知っている男性が知らない女性店員のおっぱいに顔を埋めているのを見てしまった日には、翌日から彼の顔を直視できる自信はあまりない。店の端の席に通されて、隣にはまぁまぁ可愛い女の子というか女性が座った。名前は覚えていない。
当たり障りのない会話をしながらビールをちびちびとすすっていると、突然店内が今まで以上に暗くなり、音楽のボリュームが上がった。どこからか口笛のような音も聞こえる。隣に座っていた女性も、楽しそうな顔をして僕の膝の上に跨り始めた。どういう事だ。聞いてないぞこんな展開は。
いわゆるサービスタイム開始の合図である。僕の膝の上に跨った女性は、特に何の躊躇いもなくワンピース上の衣類をはだけ、上半身をあらわにした。おっぱいだ。うん、確かにおっぱいだ。
僕は硬直した。この状態でどういう行動を取るのが適切なのか分からない。そんな僕の手を女性はそっと取り、自らのおっぱいに添えた。おっぱいだ。うん、確かにおっぱいだ。とりあえず揉んだ。柔らかかった気がする。正直殆ど憶えていない。
そのまま揉み続けていたところ、女性は自らのおっぱいに僕の顔を突っ込ませに掛かった。いわゆるぱふぱふ状態か。視界一面に広がるおっぱい。そして乳首。これが、こんな物が愛の無い乳首なのか。
耳元で囁き声が聞こえる。「舐めて」そうか、なるほど分かったそういう展開か。


お母さん、今まで育ててくれてありがとう。
僕はこれから、生まれて初めて、誰とも分からない見知らぬ女性の乳首を舐めます。
お母さんの母乳で育ったあの日から、もう20年以上が経ちました。
僕もまさか、次に吸う乳首が、こんなどこの誰とも分からない女性の物になるとは、思ってもいませんでした。

お母さん。
今まで育ててくれて
どうもありがとう。



(つづく)